010

私は渋谷の職場から自宅に帰るとき、地下鉄半蔵門線を利用します。半蔵門線は東武線に乗り入れており3本に1本くらいの割合で「久喜行き」という埼玉県の郊外まで行く列車がやってきます。寝過ごしたらそこまで連れて行かれるのかと考えながらも、一回そのまま行ってみたい衝動に駆られたりもします。

埼玉県久喜市は電車で都内まで1時間~1時間半くらいの距離でベッドタウンとして団塊世代を取り込んできました。しかしこの世代も現在は引退。その影響を受け、1人当たり所得が2011年から16年の間に5万4,000円も減ったことが日本経済新聞の調査によって分かりました。同様の傾向は東京郊外の他の路線の終着駅である茨城県取手市、東京都青梅市などでもみられるとのことです。

--☆---★---☆---★---☆---

このような現象は、団塊世代の引退により地域内の生産人口(15歳~64歳)の減少によってもたらされたものと言えます。埼玉県久喜市はもともと生産人口の割合が高い地域で、市ではその維持を図るべく新たな産業の誘致にも努めています。

その一つが圏央道の整備といった好立地を生かした倉庫業などの流通加工業です。地域内の流通加工業の従業者数は2006年~2009年の3年間で5万人強増加し、新たな産業として重要な位置づけを占めていると考えられます。

--☆---★---☆---★---☆---

しかし、倉庫業・流通加工業の賃金は全産業の平均を下回っているとされ、通勤電車に乗って都心で仕事をしていた団塊世代の所得減少をカバーするには至っていないものと考えられます。ネット通販の普及などで増加しつつある流通加工業ですが、得られた利益が地域経済にも及ぶようになってほしいものです。

日本経済新聞 9月29日(土)付朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35902440Y8A920C1L83000/