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大きな災害や金融危機などにより売上が急激に減少すると、仕入れや給与の支払いなどで支出ばかりが多くなり、資金繰りが苦しくなる企業が増えます。自社はどうにかなったとしても、債権回収先の企業の倒産で最悪の場合連鎖倒産に陥るケースも考えられます。国はそのような事態を回避するために、「政府系金融機関」を通じて救済措置を講じます。

「政府系金融機関」の一つである日本政策投資銀行は、台風21号や北海道地震により外国人観光客が減り資金繰りに困窮した宿泊業者などに運転資金を用立てたり、通常より返済リスクが高い劣後ローンと呼ばれる貸し付けを行うことを目的として緊急資金枠を設けました。これにより被災企業は資金繰り回復により経営を安定化し、民間金融機関からの貸付もうけやすくなります。

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ところで「政府系金融機関」についてですが、日本政策投資銀行のほかに、日本政策金融公庫(日本公庫)、商工組合中央金庫(商工中金)などがそれに当たります。国のコントロール化に置かれた金融機関であり元をたどると税金が原資となっています。

しかし、憲法第83条が定めるようにその使い道が国会の決議によって決められているわけではありません。なぜなら国は「政府系金融機関」に対して出資もしくは貸し付けを行っているのであり、将来回収されるものであるという考え方からです。

確かに融資先の審査にひとつひとつ国が関与することは不可能ですし、毎回国会の承認を取りつけていては災害時などに機動的な対応を取ることが難しくなります。回収されることを前提にして、一定の権限が「政府系金融機関」に与えられている形です。

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但し、「回収される」という前提が崩れた場合はこの限りではありません。「政府系金融機関」が破たんした場合にさらなる税金が投入されるのであれば、国がその負債を背負っているのと同じになるためです。

昨年、商工中金による不正融資が明るみに出ましたがこのようなことがあってはいけません。なせなら、「政府系金融機関」の信用がなくなり、お金が行き渡るべきところに行かなくなり国の経済自体が揺るぎかねない事になってしまうからです。

日本国憲法
第83条
 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

日本経済新聞 9月16日(日)付朝刊より 
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35432770V10C18A9MM8000/