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私は子どものころからあまりマンガ本を買いませんでした。すぐ読み終えてしまいもったいないというケチな理由からで、少年ジャンプなどの雑誌は友達の家に行って読ませてもらってました。大人になってからはマンガ自体をあまり読まなくなりましたが、最近ではインターネットを通じてマンガを読める時代になったようです。

しかし、インターネット上の海賊版はいくらでも拡散が可能で、著作権者にとっては深刻な被害をもたらします。政府は4月「漫画村」などの海賊版サイトについてNTTに対して遮断を要請、NTTはこれに応じました。

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この「遮断」という手法、憲法上は大きな問題を抱えています。サーバ上にある違法なデータを削除させるのとは違い、一般のユーザの通信が違法なものにアクセスしていないかどうか、一つ一つチェックする作業を伴うためです。これは憲法が禁止している「検閲」に当たる恐れがあります。

一方、「児童ポルノ」に対する遮断はすでに合法化されています。これは、児童ポルノによって児童が受ける被害は甚大かつ深刻なものであり、他に取れる有効な手段がないという理由から通信の秘密を害することもやむを得ないという解釈がなされているものです。

これに対し、著作権を含む財産権に関しては、損害賠償などの手段により回復が可能であり同等の解釈は不可能と考えられ、日本ではこれまで「遮断」という手法が認められてきませんでした。

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とはいえ、海外にあるサーバ経由で送信される海賊版の発信者を突き止め、損害賠償を求めることも現実には困難を極めます。海外ではすでに40カ国余りで、裁判所の命令を必要とするなど厳格な運用基準のもと、遮断が制度化されています。

文化の礎となる著作権を守るためにも議論が必要なときを迎えているかもしれません。

日本国憲法
第21条第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第29条第1項 財産権は、これを侵してはならない。

日本経済新聞 8月20日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34327110Z10C18A8TJC000/