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久々の投稿。7月21日(日)投票で参議院議員選挙で公示されテレビやネット上でも選挙戦に関する話題が増えてきました。なかでも、公的年金だけでは老後資金が2000万円不足するとした金融庁の報告書についてセンセーショナルに報道され、年金問題が今回の選挙の争点の一つとして挙げられています。

◆在職老齢年金制度の見直し

2000万円問題が大きく報道された直後、国民の不安を和らげようとするかのように、政府が「在職老齢年金制度の見直し」を実施する方針であることも報じられました。仕事に就き収入がある高齢者については現在、年金の支給額を減額ないしは停止していますがこれを見直し全額支給にしようというものです。

働くと年金がもらえなくなり就労意欲を削いでいるという理由から、これを廃止し社会保障制度の担い手を増やそうというのが目的です。ところが、この制度を廃止すると1兆円程度の支出増となりその財源の確保が課題となっています。

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◆年金拡大はシルバー民主主義?

一見すると高齢者を優遇するいわゆる「シルバー民主主義」が制度改革を促しているようにも見えますが、ネット上の反応を見ると以外にも大方この方針に賛同する声が多く、むしろ年金の支給を制限している現状の制度に対する批判が強いようです。

日本国憲法は国民に、健康で文化的な最低限度の生活を送れる権利、「生存権」を認めています。年金制度は歳を取って働けなくなっても生存権を保障するものであって、それが減らされることはけしからん、というのが多数派なのでしょう。

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◆財源先送りは「財政的幼児虐待」

「シルバー民主主義の政治経済学」(島澤 諭・著 日本経済新聞出版社)は、この現状について、日本においては「シルバー民主主義」は存在しておらず、「シルバーファースト現象」が発生しているに過ぎないと論じています。

すなわち、選挙においてどちらかというと多数派の高齢者の声を政治家が忖度しているにすぎず、たとえば子育て世代の保障を強くするべきという世論が強くなれば「こども保険」や「教育無償化」といった公約が掲げられるようになると指摘しています。

しかし、それらの財源はいずれも国の借金により賄っているのが現状でありこれを見過ごすことは、高齢者と現役世代が結託して将来世代に負担を先送りしているのに等しく「財政的幼児虐待」であると厳しい批判をしています。

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◆争点は未来の日本

在職老齢年金制度の見直しについて賛同する声が大きいのも、「財源が不足する」というところに我々有権者の目があまり向かないからなのでしょう。しかし、生存権を初めとする基本的人権は当然に将来の国民にも向けられたものであって、そうでなければ日本という国はそう遠くない将来、その存在自体が危ういものになるのは容易に想像がつきます。

消費増税・社会保障制度・憲法改正などが今回の選挙の争点であるといわれています。いずれも目先の利益にばかりとらわれて将来世代に負担を押し付けるような事にならないよう、投票に向かいたいと思います。

日本国憲法
第25条1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
   2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本経済新聞 6月5日(金)付より
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45708110V00C19A6EE8000/