時代劇などを見ると、よく悪代官と町人が結託して不正を働く場面が描かれます。かれらは正義の侍に成敗される運命にあるわけですが、現在の世で起き明るみになった不正では、必ずしも不正を働いた主体が悪役としてみなされるとは限らないようです。
商工中金は「危機対応融資」を巡って行員が企業の書類を改ざんし、不正に融資を行っていたことが発覚。鹿児島支店では営業員の半数程度が顧客の書類の改ざんを行っていたと言う異常な状態でありましたが、地元の反応はむしろ「民業圧迫」と批判した全国地方銀行協会会長の発言を問題視しています。
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憲法22条第1項が規定する「職業選択の自由」は、「営業の自由」も含むとされ、政府系事業体による民業圧迫についても制限されるべきという考え方があります。商工中金の例では、税金を利用して超低金利で貸し付けを行っており、民間の銀行の営業を圧迫しているという論理です。
しかし、日経の本記事において上杉素直・編集委員は、政府系金融機関が査定や調整を行い民間がそれに乗っかるケースや、政府系金融機関の支援により倒産件数が減り民間金融機関の利益も間接的に保護されているという点で相互依存に陥っていると指摘しています。
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自由市場をベースとした資本主義は貧富の格差を拡大させ生存権すら危ぶまれる事態が発生しました。その反省として国家が経済のかじ取りまでを行う「積極・社会国家」へと転換していきました。しかし近年、積極国家に対して国家への依存による国民の政治的主体性喪失などの問題が指摘されています。
民間の国家への依存と、行政による不正が加速するようなことがあれば、ますます民主主義が危ぶまれることになりかねません。
日本経済新聞 9月24日(日)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO21472480T20C17A9EA3000/