変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

2017年04月

070

恐竜が絶滅したのは約6500万年前。メキシコのユカタン半島に落下した直径10キロ程度の巨大隕石がその原因であるという説が有力です。隕石の落下というのは現在でも起こりうる事象であり、何年か前にロシアに強い閃光を放ち落下していく隕石の映像が流れたのは記憶に新しいところです。

場合によっては、人類を滅亡に追いやるほどの小惑星が地球に落下する可能性もないわけではなく、そうした事態がもし発生したときに、被害を最小限に抑えるための方策を専門家が話し合うシンポジウム「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」が5月に東京で開かれるそうです。

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もし小惑星が、日本付近に落下することが予測されるならば、落下地点の住民を強制的に避難させるような措置も必要となるかもしれません。しかし、起こる確率がきわめて低い事柄に対して、あらかじめこのような措置をとるための法整備を行うことは現実的ではありません。

日本国憲法においては、災害などの緊急事態が起きたときに強制避難など政府が罰則付きの政令を制定するには、法律による委任が必要であるとしています。小惑星落下のような想定しえない緊急事態が発生したときには、憲法上の手続きを無視してでも政府が権力(国家緊急権)を発動しなければ住民の生命が守れないような場合が考えられ、そうしたことに備えるために緊急事態条項を盛り込む憲法改正を行おうという動きがにわかに起こってきています。

社会学者の橋爪大三郎・東京工業大学教授は自著「国家緊急権」の中で、国家緊急権の存在は認めつつもそれを憲法に盛り込むことは、必要でもなく十分でもないとしています。
すなわち予め想定することができないから条文にできないのであって、憲法を無視することを憲法に規定すること自体が矛盾しているという論理です。

そのうえで、条文に盛り込むことで政府が国家緊急権を行使したことによる免責事項となり、この権利を行使するという誘因を高め、独裁を許す結果になる恐れがあると指摘しています。これは、第二次世界大戦中のワイマール憲法下のナチスドイツや、大日本帝国憲法下の日本の例からも歴史が示すところとなっています。

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橋爪氏は同書の中で、緊急事態が発生した場合でも主権者の人民が望む場合に限り、憲法の条文と異なる新たな法が生まれることで国家緊急権が「法の支配」の下で実現可能であるという法理があると述べています。その国の人民と政府がそのことをよく理解しているかどうかが試されるのがこの国家緊急権であり、このことによって決して独裁政府の誕生をゆるしてはならないといえます。

日本経済新聞 4月9日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO15041350X00C17A4MY1000/ 

005

桜が咲き出し始めて、にわかに暖かくなってきました。つい数週間前まではコートがなければ外を歩けなかったのが嘘のように汗ばむ日も出てきました。とくに関西では桜が散ればすぐ初夏がやってきて、衣替えの季節となります。

アパレル業界というのは、こうした季節の移り変わりを適格に捕えて在庫管理をしないと大量の売れ残りが発生して、泣く泣く大幅な値引きでバーゲンセールをしなければならなくなってしまいます。鉄道のICカードなどにも利用されているICタグは、こうした在庫管理にも有用で、オンワード樫山ではICタグをスキャナーで一気に読み取ることで倉庫での検品作業を10分の1にまで抑える省力化を図るとのこと。

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しかし、アパレル業界でのICタグの利用は、こうした在庫管理の効率化にとどまらないようです。ユニクロよりもさらに低価格帯商品展開をするジーユーでは、ICタグを活用したセルフレジを導入し、店舗での人手不足解消を図ろうとしています。

一方、TCIHDやワールドといった百貨店を販路とするアパレル大手では、ネット通販サイトの台頭により販売が縮小。こうした企業は、ICタグを利用して店頭での販売実績のみならず、試着をされただけかどうかなどの購買行動までを分析して、商品開発に役立ててより良い商品を作ることに注力するようです。

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ICタグ技術などのIoTの導入は、人手不足解消などの省力化の方向で語られることが多いのですが、こうした新たな価値を生み出すためのツールとしても利用できます。人が好むものを作れるのは人しかいない。そう考えるといくらIT化やロボット化が進もうともまだまだ人が活躍する場面はいくらでもあるといえます。

日本経済新聞 4月7日(金)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO15021950W7A400C1TI5000/ 

019

最近、高槻や茨木といった北摂地域には大型トラックが何台も荷物の積み下ろしができるような、巨大な物流倉庫ができてきています。新たな高速のインターチェンジが出来るなどの立地が良いことと、なによりネット通販の急速な普及によりこうした拠点の需要が高まっていることにあるようです。

しかし、そうした物流の拠点の重要性が増すにつれ、それを災害などで失った時の損失は大きいようです。2月に倉庫の火災によってその機能を失ったアスクルは、延期していた2016年6月~17年2月期の決算を発表し、主に通販事業ロハコの損失による101億円の特別損失を計上、最終連結赤字が29億円に上るそうです。

2017年5月度の通期売上見通しも130億円の下方修正、最終損益は保険金の受取額が未定のために見通し未定となっています。

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こうした、災害による収益減少を補てんする保険としては、企業費用・利益総合保険といったものがあります。しかし、こうした保険が補てんできる売上減少は、契約時にあらかじめ決められたてん補期間の間のみであり、物流機能回復が遅れればそれだけ自社の被る損失が大きくなります。

アスクルにおいては、現在も在庫商品の不足や配送遅れが発生しており、混乱した配送網が正常に戻るのは9月ごろになる見込みとのこと。そのうえ、ロハコによる売上規模は全体の1割にまで成長しており、回復までの間に競合であるアマゾンなどに顧客を奪われるようなことになれば、企業全体の事業基盤が揺るぎかねません。

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これだけ主力となった事業であれば、保険による金銭的な補償だけではなく、平時のときから災害時の代替え手段を考えておくBCPを実施しておくことが求められているといえます。

日本経済新聞 4月6日(木)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO14969730V00C17A4TI1000/ 

003

ついに先日、韓国の朴前大統領が逮捕されるという事態になってしまいました。直前の朴前大統領の支持率は4%程度と非常に低調で、昨年の末には100万人規模のデモ行進も行われており、民衆の怒りが大統領を辞任に追い込み逮捕にまで至ったようです。

韓国では、「国民情緒法」なる憲法をも上回る不文律があるといわれるほど国民感情の爆発に沿った形で政治が左右されることがしばしば起きています。韓国憲法の前文には、約100年前に日本からの独立を目指し行われた「三・一運動」や、1960年に起きた市民蜂起による「四・一九民衆理念」が明記され、民衆デモによる倒閣を高く評価していると言われています。

そうした意味で韓国の憲法は、国民が自らの手でつくった「民定憲法」の一種であるといえるのではないかと思います。

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翻って、日本国憲法に関しては「民定憲法」であることに疑念を持つ動きがあります。ひとつは、国家権力によりつくられた「欽定憲法」である大日本帝国憲法73条の改正に基づき改正が行われているという点、もうひとつはGHQ草案をうのみにして作られたとするいわゆる「押し付け憲法」理論です。

しかし憲法学の通説では、前者に関しては「ポツダム宣言」を受諾した時点で、条項にのっとって「国民主権」に移行されていたものと考えられ(8月革命説)、後者についてはGHQ草案がそのまま採用されたわけではなく生存権や、普通選挙の保障などが帝国議会により修正されたことなどから、そうした理論は否定され、やはり日本国憲法は「民定憲法」であるとされています。

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韓国の世論調査では、「韓国人が選ぶ最も魅力的な国民」で日本はドイツに次ぐ2位になっており、日本人の魅力として「徹底した順法意識」を挙げているのだそうです。いまも日本人が順法意識が高いのは、日本国憲法に基づく諸法規を支持しているからであるという言い方もできます。

しかし、もし近代以前のように為政者のいうことには逆らわない方が得、と言うような感覚がまだ残っているのだとしたら、日本の「国民主権」という概念は危ういものであるといわざるを得ません。

<韓国憲法前文>
 悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は、3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚して、正義・人道と同胞愛で民族の団結を強固にし、全ての社会的弊習と不義を打破し、自律と調和を土台に自由民主的基本秩序をより確固にし、政治・経済・社会・文化のすべての領域において各人の機会を均等にし、能力を最高度に発揮してもらい、自由と権利に拠る責任と義務を完遂するようにし、(国)内では国民生活の均等な向上を期し、外(交)では恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することで我々と我々の子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを確認しつつ、1948年7月12日に制定され8次にわたり改正された憲法を再度国会の議決を経って国民投票によって改正する。

日本国憲法前文 (抜粋)
朕は、日本国民の総意に基づいて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

(中略)

日本国民は、政党に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 

日本経済新聞 4月2日(日)付 朝刊より 

005

私の父・母は幸いなことにまだ健康で車に乗って買い物に出かけたり、インターネット通販を利用して服を買ったりしているようです。しかしもし今後、要介護などの状態になったならばそれもかなわなくなってしまうと考えると心配になってきたりします。

アパレルファッション卸「大西」の子会社で、介護ファッション(ユニバーサルファッション)の販売を行う「ケアファッション」は、昨年9月から大阪市内を中心におこなっていた介護施設への持ち込み販売「衣動バザール」を京都や岡山、三重、静岡などの他府県にも広げるとのこと。他地域からの強い要望があってのことのようです。

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「ケアファッション」はこれまでカタログ販売やネット販売を行ってきますが、要介護の人が自分で電話を掛けたり、パソコンやスマホを使ったりすることが難しいことを考えると、ターゲットは介護をする人になります。また、実店舗を持つ競合も同様で自分で商品を選ぶことができません。結果、機能重視の品ぞろえになります。

「衣動バザール」を開始したことにより直接に要介護の人に販売することができ、7days fasionなど日々のおしゃれを楽しみつつ、卸売の強みを生かして低価格で提供することで支持を集め、他地域からの引き合いも獲得できたものと考えられます。

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ファッションというものは、自己実現の重要な一部であることを考えると、どんな人にもやはり本人に直接訴えかけることが最も効果的なようです。

船場経済新聞 3月31日(金)付 より
http://semba.keizai.biz/headline/666/ 

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