東北の沿岸部の被災地を訪れると、津波浸水の水位がどこまでであったかを示す標識をよく見かけます。人の背丈をはるかに超える場所に標識があったり、常識では考えられないような津波が襲ってきたことが想像できます。地震発生から津波到達までの数十分間、その危険をどこまで察知して避難できたが生死を分けたようです。
先日、仙台地裁であった大川小学校における津波被害の訴訟では、教職員の避難誘導の方法に過失を認める判決が下されました。しかし、石巻市は30日の臨時議会において、この判決を不服とし控訴する議案を可決しました。
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いままで経験したこともないような巨大地震が起きた中で、果たして人はどこまで冷静な判断をすることが可能なのか、議論は分かれるところかとは思います。その点はさておき、なぜ石巻市や宮城県といった地方自治体がその賠償責任を負わなければならないのでしょうか。
それは日本国憲法17条において、公務員の不法行為について国家が賠償すること(国家賠償責任)を規定しているからに他なりません。明治憲法下においては、国家の責任を認めない国家無答責の原則であったため国家賠償が認められることは極めてまれでした。
国家無答責の原則に則ると公務員のした行為によって大きな損害を被った場合に、その賠償請求をどこにもできなくなり、被害者救済が実現不可能となります。そうしたことを踏まえ、戦後憲法制定時に衆議院による修正が加えられこの条文が追加されました。
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国や自治体は大きな災害による被害を未然に防ぎ、また防げなかった被害の補償する保険の役割も担っていると言えます。それだけに普段からその運営には関心を持っておくことが肝要です。
日本国憲法
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
河北新報 10月31日(月)付記事 より
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201610/20161031_13027.html