001

先日、約9年半務めた京都のお客様の任務が終了し、最後の日になんとお客様から京都伏見のお酒をいただいてしまいました。ビールやウイスキーもいいけどやはり日本人として日本酒の味も忘れるわけにいきません。大事に味わっていただこうと思います。

日本酒の歴史は古く、江戸時代より前から酒を作りつづけているという酒蔵も数多く存在しています。神戸・灘の酒蔵である剣菱もその一つで、500年以上もの歴史を持ち、製造方法も昔ながらの木製の桶や樽を使用しているのだそうです。同社ではこのほどこれらの製造も自前で行うとして12月に5億円を投資して製造拠点を立てるのだそうです。

--☆---★---☆---★---☆---


総務省の家計調査によると二人以上の世帯の1か月平均酒類の消費は2000年の3,660円から2016年の3,120円と減少傾向にあり、なおかつ若者の日本酒離れも指摘されています。こうした中、他の酒蔵では地ビールの生産や日本酒の成分を使った化粧品の製造に乗り出すところも出てきています。

このような環境の中で、5億円もの投資をして古くからの日本酒製造の道具まで製造するのは一見、リスクが高いことのように思えます。しかし、剣菱の経営理念からするとこれは合理的な決断のようです。

剣菱には「止まった時計でいろ」という家訓が存在し、流行を追いかけることに強い戒めを示しています。自信を持つ味をしっかり守り続けることでお客様の好みは必ず戻ってくるという教えだそうです。確かに、たとえば海外に目を向ければ近年日本酒の輸出金額は伸び続けており、同社も味は守りつつも海外展開には積極的に取り組んでおり買ってくれるお客様へのアプローチは怠らないようです。

--☆---★---☆---★---☆---


よく聞かれる投資のポートフォリオ理論よりも500年もの歴史の中で培ってきた家訓には重みがあります。自らのアイデンティティを保つためにも理論より理念を大事するべき場面もあるということのようです。

日本経済新聞近畿版 7月29日(土)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO19414350Y7A720C1LKA000/