変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

スモールビジネスの実践を西風にのせてお届けします。

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人気の就職先ランキングを見ると、上位を占めるのはいつも大企業。全国的な知名度を考えると当たり前の話ではありますが、そんな大企業が数を減らしているという奇妙な現象が起きているそうです。しかも景気回復により中小企業を含む総法人数が3年連続で増えているにも関わらず、大企業は3年連続で減少と全く逆の状況になっているのだそうです。

そのからくりは、税制上の問題であるとこの記事では指摘しています。法人税法上の「中小企業」は資本金が1億円以下であり、これを超えると大企業とみなされ法人税率が上がるのに加え、赤字でも支払う義務のある外形標準課税を課せられます。そのためこうした「税制の壁」を意識して1億円を超える資本金の積み上げをためらいがちであるといわれています。逆に、吉本興業のように大幅な減資をして資本金1億円に下げ「中小企業」になるという例まで出てきています。

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「中小企業」の定義は、実はこのほかにもあり中小企業基本法による区分では資本金基準、従業員基準のどちらかを満たせば「中小企業」とみなされます。
それぞれの基準は業種によって異なり

製造業その他・・・資本金3億円以下 or 従業員数300人以下
卸売業・・・資本金1億円以下 or 従業員数100人以下
小売業・・・資本金5000万円以下 or 従業員数50人以下
サービス業・・資本金5000万円以下 or 従業員数100人以下

となっています。この法律は「頑張る中小企業」を国が支援する際の基準となっており、1999年改正の中小企業基本法では中小企業に求める役割として「新たな産業の創出」「就業の機会の増大」「市場における競争の促進」「地域における経済の活性化」を定めています。

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もし、記事が指摘するように税制上の問題だけで「中小企業」でい続けようとするならば、それ以上の投資や雇用の拡大が望めず真の意味で「中小企業」を保護する意味がなくなってきます。自立できる規模の企業なのであれば、国の優遇措置に頼ることなく社会に貢献してほしいものです。

http://www.nikkei.com/article/DGXKASFS21H01_R20C16A3NN1000/

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こないだNHK-BSの「あてなよる」という番組で、アテの料理によって合う熱燗の温度が変わってくるというのをやっていて日本酒とは奥が深いものだと感心していました。同じように料理に合わせて日本酒を振舞う、この発想を製品ラインアップに反映させた酒造メーカーが群馬県にあるそうです。

フランス料理のコース料理では、食前酒のシャンパン、魚料理に白ワイン、肉料理に赤ワインと料理によって出されるワインの種類が異なります。永井酒造では、これに倣い食前酒の「スパークリング・サケ」、魚料理には口当たりの良い「純米吟醸酒」、肉料理には重厚な「ビンテージ・サケ」、食後のデザートやチーズに合う「デザート・サケ」を揃え欧米の高級レストランを中心に売り込みを開始。当初は海外市場では日本料理店が主な顧客だったのが、これらの製品ラインナップがそろったことでレストラン側の反応も変わってきたそうです。

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製品ラインナップをどのように展開するかという戦略を「プロダクト・ミックス」と呼びますが、標的市場に合わせて
製品ラインの拡大・縮小・廃棄などを行い、マーケティング戦略との整合性を図っていきます。

永井酒造の場合、従来の日本料理店から欧米の高級レストランに新たな市場を見出し、酒にアテを合わせるのではなく、料理に酒を合わせるという西洋的な逆転の発想で臨むべくこの4つの製品を開発しました。これら4つが揃ったことで「コース料理」という高級レストランが提供するサービスにマッチすることができ、納入量を伸ばすことができたといえます。

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筆者は、日本酒を頼むと大概飲み過ぎてしまい翌日後悔することになるのですが、コース料理の中で最も合うお酒を適度な量を勧めてくれるようになれば、もっと安心して日本酒を楽しめるかもしれません。

日本経済新聞 3月21日(月)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO98665480Z10C16A3TJE000 


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今日のように日差しの暖かい日は、布団を干して西側の窓のカーテンを開けておきます。春先は夜になると冷え込みますがこれでだいぶ温かく眠れる(ような気がする)ものです。
同じように夏の間に熱をため込み、冬にその熱を利用して雪を解かすという仕組みを導入した街が東北にあるようです。

青森県弘前市では、駐車場の床一面と地中の熱交換器に細管をめぐらし不凍液を循環させ、夏は太陽熱で温められた駐車場の熱を地中にため込み、冬になるとその熱を利用して駐車場を温め雪を融かすシステムを導入、初期費用は約800万円と従来の仕組みの2倍以上を要しますが、運転に必要な費用はポンプを動かす1万2000円程度が年間にかかるのみで従来のものの10分の1にまで抑えられるそうです。

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「いかに低いコストでいかに必要な機能を調達するか」これは、モノづくりの場面では避けて通れない概念であり、VE(Value Engineering)とも呼ばれています。VEにおいては、分子に機能、分母にコストとしたときの値が製品価値であるとし、それを最大化するために製品設計が行うという考え方です。

近年、VEはこの記事のような公共事業にもよく取り入れられており、弘前市の例でいえば駐車場の雪を熱で融かすという機能をいかに安いコストで実現するかを考えた結果、「夏の間に地中に熱をためる」という結論に至ったといえます。

このほか記事では、大陸から流れてくるゴミを焼却するときに発生していた熱をエネルギーとしても利用するという長崎県対馬市の取組みも紹介しています。この場合は分母の機能に「熱をエネルギーとして利用する」という補助機能を加えて「価値」を高めたものといえます。

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東日本大震災により原発などの大規模集中型のエネルギー供給に脆弱性が表面化したことから、こうした地元に密着したエネルギー開発は災害時のエネルギー供給を確保する手立てともなると考えられているようです。

いざというときに必要な「価値」を得るには、普段から何かに頼りきりになるのではなく、どのようにしてそれを実現するのか考え続けておくことが大切だということですね。

日本経済新聞 3月20日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98661300Z10C16A3MY1000/

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