変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

スモールビジネスの実践を西風にのせてお届けします。

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ここ数年は風邪を引くと治りが悪く薬に頼ることが多くなりました。日本には風邪薬をはじめとして数多くの薬が日本の製薬会社から日本人向けに開発されていて助かります。しかし、最近はその製薬業界に異変が起きているようです。

中外製薬会長兼CEOの永山治氏はこの記事で次のように語っています。
「かつては研究者の個人芸で(新薬を)開発することもあったが今はスーパーコンピューターを使う時代。特許切れになったものでも完成度が高く必然的に難しい薬の開発をせざるを得ない。世界の製薬大手あ年間50億ドルから100億ドルの研究予算がありこれを日本の製薬会社の企業規模でやるのは無理。(日本の製薬会社が生き残るためには)再編するか、オープンイノベーションで他社の製品の開発権を買うかだ―」

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製薬業界は新薬の開発に多大な費用と時間がかかり高度な技術戦略が求められることが知られています。一般的に、基礎研究から製品を販売し産業化するまでには、資金面や実用性の面で事業化するまでの間に「死の谷」、事業化したあとも競争に勝ち残り産業化できるまでの間に「ダーウィンの海」と呼ばれる障害があると言われ技術戦略の難しさを示しています。そのため企業は技術においてリーダーシップをとるだけでなくリーダー企業の技術に追随するという戦略をとる場合もあります。

日本の製薬業界の場合、もしリーダーシップ戦略を取ろうとするならば世界の大手の傘下に下ることを含めた再編、追随戦略をとるならば開発権を買うという選択肢しか残されていないと永山氏は語っていることになります。
そして、中外製薬は前者の選択をとりスイスの製薬大手ロシュの傘下に入ることにしたようです。

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海外企業の傘下に入ったとしても日本人の体に合った薬の開発は続けておいてほしいと願うばかりです。

日本経済新聞 3月27日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO98920980W6A320C1TJC000

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最近はあまり行かなくなりましたが、20代のころは梅田HEP5のビームスに良く行っていました。1階の大部分を占めるほどの広い売り場で比較的手ごろなカジュアル服が手に入るのが魅力でした。

そんなビームスが商品情報管理にICタグを導入するそうです。ICタグは専用の機器にかざせば、値札に埋め込んだチップからサイズなどの商品情報が読み取れる仕組みです。ICタグがなかったときには約32時間かかっていた棚卸作業が3時間程度に減り、従業員の在庫管理の負担が大幅に減ることになるそうです。

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近年、製品ライフサイクルの短命化に伴って在庫が不良債権になりやすくなっている背景から、在庫管理が注目を浴びています。在庫管理の方法には大きく分けて、定期的に在庫量を確認して適量の在庫を維持する「定期発注方式」、在庫量が発注点より下回ったら定量を発注する「定量発注方式」があります。いずれも在庫量を正確に把握しておく必要があり、物によってはその管理コストを下げるために「ダブルビン法」「包装法」「3棚法」といった「簡易在庫管理方式」が取られるものもあります。

ICタグの技術は、現物の在庫量を瞬時にコンピュータに取り込む技術であり、常にデータベースを通して在庫量を把握することができるため在庫管理にかかるコストが大幅に削減できる点に大きなメリットがあります。
ビームスのように、常時7000~10,000点もの商品を扱っているような店舗では導入の効果は絶大なようです。

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こうした管理コストを下げることにより、中核となる業務である接客に注力ができるようになり、より似合う服を選んでくれるようになるかもしれません。

日本経済新聞 3月26日(土)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98899620V20C16A3TI5000/ 

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関西へ引っ越してからかれこれ10数年来、毎年横浜FCの遠征応援で西日本にやってくる高校時代の親友がいます。横浜FCと言えばキングカズこと三浦和良選手が所属しているチーム。そのときは私も一緒になって応援するのですが、残念ながらゴールを決めてカズダンスを踊るところは未だお目にかかったことはありません。それでも彼がピッチに立つと観客席は盛り上がり、中年に差し掛かってきた私も「まだまだやれる」と勇気をもらいます。

そんな彼が隔週で日本経済新聞に寄稿している「サッカー人として」は、サッカー界で一世を風靡した彼なりの視点で物事を描いていて、いつも興味深く読んでいます。

今週は、報酬とモチベーションについての記事でした。
海外のサッカー界では今、中国リーグが65億円だとかものすごい金額でブラジル人選手を集めているそうです。「お金で買われて」という批判もありますが、彼はこのことについて肯定的。むしろ「自分の実力がそれだけ評価されるのであればどこへでも行くべきで、たとえそれがこれまでと全く環境の違う外国であってもステップアップできる喜びがあればささいな環境の事など忘れてしまう。」と述べています。

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ハーズバーグの「2要因理論」によれば、人が仕事に対してどのように向き合うかを決めるのは、「仕事の達成感」「仕事の達成に対する承認」「仕事を通しての成長」などからなる「動機づけ要因」と、「監督者・同僚との人間関係」「給与」「作業環境」などの「衛生要因」と2つの次元からなり、「動機づけ要因」は仕事に対する積極的な動機づけとなるが、「衛生要因」は不足すれば不満を感じるだけのものであると結論づけました。

しかし、カズ選手の考え方では「同僚との人間関係」や「作業環境」などの「衛生要因」の変化は全く苦にならず、逆に「衛生要因」のはずの「賃金」が「動機づけ」になっていると言っており、この理論は全くあてはまりません。

これに対しポーターとローラーが確立した「期待理論」においてある仕事への「動機づけの強さ」は、「①努力すれば業績が上げられる確率が高い」「②業績が上げられれば何らかの報酬がもらえる確率が高い」「③もらえる報酬が魅力的である」と3ステップで高められるものとしています。

カズ選手のようなプロスポーツの世界ではこちらの理論の方が「動機づけ」を説明するのには適しているようです。

自分の実力が評価されるかどうかだけが「動機づけ」となり、それ以外の「衛生要因」などはどうにでもなる。そう思えてこそ本当の「プロフェッショナル」と言えるのかもしれませんね。

日本経済新聞 3月25日(金)付 朝刊より

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