ここ数年は風邪を引くと治りが悪く薬に頼ることが多くなりました。日本には風邪薬をはじめとして数多くの薬が日本の製薬会社から日本人向けに開発されていて助かります。しかし、最近はその製薬業界に異変が起きているようです。
中外製薬会長兼CEOの永山治氏はこの記事で次のように語っています。
「かつては研究者の個人芸で(新薬を)開発することもあったが今はスーパーコンピューターを使う時代。特許切れになったものでも完成度が高く必然的に難しい薬の開発をせざるを得ない。世界の製薬大手あ年間50億ドルから100億ドルの研究予算がありこれを日本の製薬会社の企業規模でやるのは無理。(日本の製薬会社が生き残るためには)再編するか、オープンイノベーションで他社の製品の開発権を買うかだ―」
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製薬業界は新薬の開発に多大な費用と時間がかかり高度な技術戦略が求められることが知られています。一般的に、基礎研究から製品を販売し産業化するまでには、資金面や実用性の面で事業化するまでの間に「死の谷」、事業化したあとも競争に勝ち残り産業化できるまでの間に「ダーウィンの海」と呼ばれる障害があると言われ技術戦略の難しさを示しています。そのため企業は技術においてリーダーシップをとるだけでなくリーダー企業の技術に追随するという戦略をとる場合もあります。
日本の製薬業界の場合、もしリーダーシップ戦略を取ろうとするならば世界の大手の傘下に下ることを含めた再編、追随戦略をとるならば開発権を買うという選択肢しか残されていないと永山氏は語っていることになります。
そして、中外製薬は前者の選択をとりスイスの製薬大手ロシュの傘下に入ることにしたようです。
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海外企業の傘下に入ったとしても日本人の体に合った薬の開発は続けておいてほしいと願うばかりです。
日本経済新聞 3月27日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO98920980W6A320C1TJC000